2021年5月21日金曜日【追悼ライブ】版画家コマツソウルカッター追悼スペシャル [On The Mountain]/[“Ritual session” featuring MoGoToYoYo]@高円寺JIROKICHIライブレビュー

「東京に住んでいる1000万人がある日、山手線のホームに降り立ち1000万人がテナーサックスを首から下げて一斉に吹く。
沢山のサックスが、沢山のセックスを祝う日。
東京の1000万人がサックスを吹きながら、東京を練り歩いている。

魂転がせグルグル回せ。
そして踊ろう情熱のダンス。
存在するために存在する人間が、存在が爆発する音楽を発する。
全ての理屈がぶっ飛んでいく。

巨大なテナーサックスと蛇がキュルキュルととぐろを巻きながら空を泳いでいる。
サックスと人間は生命のために鳴るんだぜ。
青いのは空が晴れているからだ。」

2020年7月に急逝した版画家・コマツソウルカッター氏の肉声から幕を開けた
<コマツソウルカッター 追悼スペシャル [On The Mountain]/[“Ritual session” featuring MoGoToYoYo] >。

プリミティブな要素を多分に含んだピアノトリオ ”On The Mountain” 、Art Ensemble of Chicagoへのリスペクトバンドとも言える ”MoGoToYoYo” 、芳垣安洋氏リーダーの各バンドの音楽性をひと目見て感じさせるビビッドなフライヤーデザインを手がけたコマツソウルカッター氏との深い縁から、芳垣安洋氏の仕切りによって今回のスペシャルセッションが行われた。

芳垣安洋氏と月契約を結んでいたというコマツソウルカッター氏のフライヤーデザインは、芳垣氏を通じてコペンハーゲン・ジャズ・フェスティバルのプロデューサーらの目に止まり、2017年の同フェスティバルでのメインビジュアルとなり街中でコマツソウルカッター氏の作品が称賛されたという。
「コマツくんもとうとう世界進出だね!」と盛り上がっていた折からコマツ氏の病気が見つかり、静養に入った矢先の訃報だった。

このスペシャルセッションは芳垣氏作曲の「MbirVa」という名の通りアフリカの親指ピアノ、カリンバを伴って演奏が始まる。

フェラ・クティのようなアフロビート、パンクチュアルな激しいビート、ブルージーなビート…心も身体も踊り出したくなる様々な音楽が内包されたこのスペシャルセッションの魅力は是非聴いて感じていただくこととして、このスペシャルセッションの演奏と背景にあるコマツソウルカッター氏の作品を通して考えさせられたことは、なぜ私たち日本人はルーツミュージックに心惹かれるのか、ということであった。

芳垣安洋氏のリーダーバンド、On The Mountain も MoGoToYoYoも、ネイティブアメリカンをルーツに持つJim PepperやDon Cherry、アフリカ系アメリカ人から組織されたArt Ensemble Of Chicagoなどの音楽からの影響が色濃く、コマツソウルカッター氏の作品は、キュビズムのようであり、アフリカンアートのようであり、縄文土器のようであり、太古の時代自然と共に平和に暮らしていたであろう私たちの魂の奥に「忘れ物がないか?」と呼びかけてくるようだ。

ネイティブアメリカンの精神やルーツミュージックが我々日本人の縄文時代の記憶と結びついているのではないか、と問うたのはネイティブアメリカンの著書・訳書で知られる北山耕平氏であったが、このライブ中不意にそのことを思い出し、そして、芳垣安洋氏、コマツソウルカッター氏、2人の魂はそうした言葉には出来ない奥深い場所でしっかりと手を結び合っていたのだろう、とひとりで勝手に納得してしまった。

会場となった高円寺JIROKICHIという場所は、ブルース、ロック、ジャズ、ルーツミュージックなどで著名な老舗ライブハウスのひとつだが、ここで良く演奏していた(そしてコマツソウルカッター氏と縁の深かった)ドラマーの故・古澤良治郎氏、ベースの故・川端民生氏、サックスの故・片山広明氏、ピアノの故・本田竹広氏、サックスの故・臼庭潤氏、今回芳垣氏のMCからも話題にのぼったトロンボーンの故・板谷博氏やトロンボーンの故・大原裕氏など、多くの魂がコマツソウルカッター氏と共に集結し、このスペシャルセッション中に酒盛りしながら大喜びしている様子がありありと浮かんできて、ニューオリンズでのJazz funeral(ジャズ葬)のようにも感じられ、それにはJIROKICHIがぴったりで、コマツさんがこの場所を選んだのかな、とも思った。

このスペシャルセッションのエンディングはJim Pepper作曲の「Witch tai to」というネイティブアメリカンのペヨーテの歌を元にした曲で終わる。

コマツさんがいなくなってしまったことはとても悲しいことだけど、コマツソウルカッターの作品も、音楽も力強く生き続け、私たちへの問いかけはやめない。

全編が生命の祝福に満ちたようなこのスペシャルセッションは、多くの人の記憶に残り続けることと思う。

願わくば 偉大なる精霊が 明日も あなたのこころに 日の出を もたらさんことを。「虹の戦士」翻案:北山耕平

Point. 石渡久美子

■【追悼ライブ】版画家コマツソウルカッター追悼スペシャル [On The Mountain]/[“Ritual session” featuring MoGoToYoYo] 〜6/6(日)まで配信

■【追悼ライブ】版画家コマツソウルカッター追悼スペシャル [On The Mountain]/[“Ritual session” featuring MoGoToYoYo] 後売りチケット
〜6/6(日)まで販売
https://jirokichi.official.ec/

■座・高円寺 コマツソウルカッター 追悼展
〜6/6(日)まで
http://komatsusoulcutter.com/

■コマツソウルカッター作品・グッズ販売ショップ
https://shop.komatsusoulcutter.com/